PANECO プロダクト 開発ストーリー

服から生まれた「PANECO」を使ったプロダクト開発ストーリーを紹介します。
ファッションロス
ファッションロスという言葉があります。
世界的な問題になっていますが、ここでは日本の状況を見ていきましょう。
衣服は製造する際にも大変な環境負荷がかかります。製造段階では多くのCo2を排出し、多くの水を使います。日本で売られている服の98%は海外からの輸入ですから、
輸送の際にもエネルギーも必要になります。
日本では多くの服を購入し、手放します。平均すると1年間一度も着ない服が25枚もあるそうです。
手放す服のうち、人にあげたり、リユースやリサイクルされるのは32%、残りの68%はごみに出されています。そのうち5%は再資源化されますが、95%は埋め立て、焼却処分されています。
その量、全国で1日あたり1300トン。大型トラック130台分。年間にすると47万トンに及びます。
また、ファッション業界で、どうしても売れ残り、ブランド性を保つために廃棄され、焼却処分されている現実があります。さて、どのくらいの量が廃棄されているのでしょう?
国内衣料のうち、13%は売れ残るそうです。そのうち翌シーズンに再販されたり、アウトレットでの販売をのぞき、廃棄処分されるのは、0.3%。以外と少ないと思われるかもしれませんが、
2020年の供給量82万トンのうち、2460トンは新品のまま廃棄されていることになります。
日本では、現在、服が年間に82万トン供給され、52万トンが廃棄されています。大変なエネルギーを使い作った衣服がエネルギーを用い廃棄されている現状があります。
「ファッションロス」の言葉の定義は様々ですが、この現状を問題視して様々な取組みがスタートしています。
2023年1月にフランスでは売れ残りの新品の衣類を企業が廃棄することを禁止する法律が施行されました。
参考: 2021年 環境省、日本総研 「ファッションと環境」
パネコとの出会い
そのような「ファッションロス」に独自のアクションを起こした人がいます。
什器のデザイン、製造販売を手掛けるワークスタジオの原和弘さんです。突然訪れてきたのは2020年の春のことでした。
大のファッション好きな原さんは、売れ残った廃棄される服を内装パネルにしたい。という熱意が強く、
この問題をなんとかしたいんです!と意気込んでおり、試行錯誤の実験を繰り返していました。初期のサンプルは、服の繊維だけではなく、紙が混ざっていたり、木の粉やチップが混ざったもの、カーボンなどを混ぜたもので、肌触りもすこしざらざらしたものでした。もうすこし改良が必要だな。という印象がありましたが、その考え方に可能性を感じ、協力していくことにしました。その後に衣料商社のモリリンの協力もあり、ついにパネコは出来上がりました。
初めて見たパネコは繊維が引き締まり、しっかりとしたボードになっていて、とても魅力ある素材になっていました。ここまでの道のりは大変な苦労があったと思います。
製品は厚み5.5mm、920mm×920mm 木質パーチクルボードと同様の物性を持っています。
パネコのリサイクルシステム
ワークスタジオでは、パネコのリサイクルシステムを作り上げました。
まずは社会から服を回収し、それを福祉施設でファスナーやボタンなどを外してもらいます。ここは福祉施設の仕事を生んでいます。金物を外された衣服を粉砕し反毛にし、パネル化しパネコとなります。
そしてパネコを使用した什器や空間が社会に送り出されます。時を経て使われなくなったパネコは回収され、粉砕し再びパネコに戻ることができるのです。
ここが肝要だと思いますが、再リサイクルのシステムが整っている素材はなかなか出会いません。
アップサイクルされた材料が、循環型のリサイクルシステムに組み込まれる。パネコはそのような魅力的なシステムの上に成り立っています。
パネコの表情
パネコはその時に手に入る服の種類によって表情を変えます。大抵は色が混ざるため、グレーになります。いろいろな絵具を混ぜるとグレーになってしまう原理と同じです。しかし、たまに反毛の大きさが大きく、繊維がわかるものがあり、よく見るとラメが入っていたり、青い生地がおおく、深いブルーになっているのはデニム生地かもしれません。非常にまれですが、パネコは紙のタグも粉砕しているので、タグの印刷が入っていたこともあります。パネコはまるで化石のようにその時代を固定し、様々な表情を見せてくれます。現在は粉砕した反毛の大きさによって、サンドとストーンが用意されています。
パネコ展示会へ
パネコの初めての展示会は、モリリンの会社の展示スペースで開催されました。衣料をリサイクルしたパネコを素材にして、長く使える家具を作り上げました。特に、いくつかに分割できる本棚は、引っ越した先でも形を変えられるため使いやすく長寿命となります。そして、いよいよ手放すときには再びパネコに戻ります。再リサイクルの輪に入ったパネコをさらに長く使ってもらうことで、環境負荷をさらに減らす取り組みです。ワークスタジオは、その家具を作るにあたり、大きなトムソンを使っていました。こんなに大きなものをトムソンで抜けるのかと驚きましたが、なかなかうまくいかないと言いながら、大きな家具を見事に作り上げていました。
パネコ サスティナブルファッションエキスポへ
2020年の秋、パネコはサスティナブルファッションエキスポに出展しました。コンセプトは「パネコを作った空間」で、棚で間仕切り壁を作り、部屋に見立てた空間を作りました。パネコを空間に使ってほしい願いを込めた展示で、多くの人に来場いただき、大変好評でした。ここでは、テーブルやペット用の小屋など、いくつかの家具のプロトタイプを作りました。また、トムソン型で抜いたパネコクロックの前身のプロトタイプも制作しました。トムソンで数字が綺麗に抜けているのは面白く、可能性を感じさせるには十分でした。
2021 ミラノデザインウィークへ
2021年6月、まだコロナの影響が強かった中、パネコはミラノデザインウィークに出展しました。パネコの開発は続き、5.5mmの厚みに続き3mmのパネコが誕生しました。3mmのパネコは柔らかく、曲げ加工ができるため、曲線を使った空間の提案をしました。パネコクロックの試作や、秋田木工で製作した曲木椅子の座面にパネコを貼ったものも展示され、多くの人に好評を得ました。ここでは様々な試みが行われました。秋田木工と開発していた椅子の座面にパネコを貼ったものや、ソファ、本棚など、実用化できそうなものも出てきました。
パネコクロック誕生
何度かの試作の後についにパネコクロックが出来上がりました。リサイクルされた服が時を刻む。なんとも気持ちの良い製品ができました。
一枚づつ表情の違うパネコが静かに人に寄りそいます。

冨永愛さんとの出会い
冨永愛さんとの出会いは、私たちにとって大きな転機となりました。冨永さんはエシカルでサステナブルな生活を実践し、私たちの提案にも賛同してくれました。新しいスタジオの家具セレクトの仕事を受けた際、私たちと共にパネコの本棚をデザインしました。この本棚は、実際に生活空間に入ったパネコ家具の第一号となりました。冨永さんは、パネコの表情に心を奪われ、とても喜んでくださいました。その後、冨永さんのご自宅のリノベーションでも、パネコの本棚やセンターテーブルなどをデザインしました。冨永さんのような発信力がある人が味方になってくれることは、私たちにとって大変心強いことです。
現代社会において、環境問題は深刻な課題となっています。私たち人間がどのように生きていくのか、その答えは今の世代では出せないかもしれません。しかし、次の世代へバトンをつなぐ義務があると考えています。このような状況下で、パネコは一つの回答として有用に思えます。 デザイナーとして、パネコのような素材を使用することで、環境問題に対する取り組みを進めることができます。また、デザインを通じて環境問題に対する意識を高めることができます。これからも私たちに何ができるのか、何が伝えられるのかを模索しながら、環境問題に対する取り組みを進めていきたいと考えています。